IPサービス化の進展の現状と企業社会を取り巻く環境の変化
                              2005.8.4
0)前提

  企業を取巻く経営環境は産業社会そのものも含め急速に変貌を遂げている。
震源の主な原因は、“ヒト、モノ、カネ、情報”の所謂経営資源の著しい不均衡が
拡大していることによる。従来はこれらの資源は大企業、国家機構など大組織に
まとまって存在していたのだが、今では極めて分散遍在化してゆく流れの中にある。
 また従来無尽蔵に存在していると考えられてきた空気や光や水の様な自然環境資源で
さえその有限性への認識が深まり、これら資源をコスト化か課税化は別として市場経済に
組入れなければならないと考えざるを得ない段階に至った。
これらの企業を取巻く大前提の変化、経営環境の変貌が個別企業の経営や国家、
国際社会を揺さぶっている。
 産業社会では“IT化の進展”などと呼ばれるコンピューター化、通信革命が進行中とのことで
“ユキビタス-ネットワーク社会の到来“が大した根拠も示されずに予測されている。
さて“人、物、金、情報”の著しい不均衡の典型的な社会現象はLinux開発の様な
所謂“オープンソース化”の展開、運動の進展に顕著にみられた。インターネットに拠る
世界中の技術者集団が連携した“社会運動”とも呼べるコンピュータソフトやシステムの開発は
“利益追求”を目的とする企業や国家などの大組織と明らかに違う集団(ネットワークコミュニティ)
によって“知識、情報、技術”つまりは能力(人的資源)の著しい遍在を、彼らの主張とその実績
と伴って、明確に社会に示した。
 また、NGOなどの非営利、非従来組織型団体の運動なども上記の現象と一脈も二脈も通じ、
“明確な単一目的にもとずく組織運動”の有効性と存在感を社会に示した。
同時に一方で企業組織は、冷戦後の市場経済化、グローバル化の流れの中で近代市民社会の
一員としてその歴史的有効性と正統性を減じることなく個人と並び社会の主役を演じている。
これらの歴史的事象の同時進行はその歴史地殻の奥深くからやって来ているに違いない。

1)IPサービス化の進展の概況

 ここ数年のコンピューター関連産業をめぐる大きな技術革新は通信ネットワーク関連分野で起きた。
言うまでもなくインターネットの爆発的な発展進展である。基幹ネットワークの光ファイバー網の
敷設拡大と光時分割多重(TDM)から光多重化伝送技術(高密度波長多重技術:DWDMや低密度波長多重技術
:CWDM など)へのブレークスルーは光ファイバー利用技術の飛躍的効率化を結果してネットバブル崩壊の
一因ともなったが、他方半導体の量産効果を中心としたPCの低価格化と結びついてインターネットの個人、
家庭や小規模組織への普及を加速し、IPネットワーク網はもはや産業社会のみならず
一般社会のインフラとなってしまった。長い間“ラスト1マイル”と言われで来たIPネット網の
“毛細血管”である家庭と地域IP網との接続もADSL、FTTH(Fiber To The Home)等のブロードバンドの
急速な普及でボトルネックを解消しつつある。
 IP化つまりインターネットプロトコルの爆発的な拡大と揺るぎないデファクトスタンダード化は
それでも今もって完了せず現在も依然進行中である。より過激に表現すれば本当の発展はこれから
やって来るとさえ言えるのだ。
 これから数年の内にやって来る無線IPサービスの本格普及、IPアドレスのV6化、
インターネットのブロードキャスティング利用等の新技術群は既に明らかになっていて
有力なデファクトスタンダード群、標準化の動向は大半判明している。要はそれに伴う商品、
サービス群の登場、コンテンツの内容とサービス利用形態、企業群の戦略的提携(アライアンス)
の最終動向などがまだ混沌とした状態の中にあるだけなのだ。

2)企業経営に与える影響とネクストカンパニーの姿

 これらは日々、新聞・経済雑誌などが伝えているが、その真偽はともかくとしても、
企業はそのガバナンス、資本形態、社会的存在としての存在意義の明確化(場合によっては再定義)
を自ら求めなくてはならない。日本については経営資源の不均衡遍在化は歴史にあまり例を見ない程
であるが、“バブル崩壊”後の“失われた10年”を経て確実に且つ急激に進行中である。
産業社会の中核資本である銀行資本の棄損、産業社会に於ける国際競争力を強める企業群と
敗北企業群との明確な分化や国家及び公的セクターの負債増加などは上記不均衡の原因であり結果でもある。
 日本経済の再生が“失われた10年、15年”を経て行われるとした場合、その時企業の姿はどの様なものと
なるだろうか?まず最初に、従来企業も新興企業もメーンバンク制の崩壊した“廃墟”から外銀、外資などと
の取引、戦略的提携に全く躊躇しないだろうし、競争力を高める為ならあらゆる可能な行動を自由に
意思決定するだろう。これらは経営層の世代交代を急激に進行させ“企業内に少子化問題の顕在化”
をもたらすことになる。いずれにしても停滞を続けた10年間の企業組織内に於ける生産性の異なる
ジェネレーション問題は極めて深刻な危機をいずれ顕在化させるだろう。
さて新しい環境下での企業行動は以下の様に予測される。

  @ 当面経済成長の鈍い環境下では適正な成長を必要とする従来型組織は組織を分割再編し
     コアコンピタンスの確立を目指すか、
  A 急激に成長する分野に資源を集中し未踏の市場の覇者を目指すか、
  B あるいは極めてニッチな市場での覇者を目指すか。

 これらの企業群の戦略的行動が行われる過程として日本経済の再生した姿がイメージさ
れる。例えば@の例としては全く新しい顔(敵対企業やNGOや個人とすら提携する様な)
を持つ再編再組織化された財閥系企業群の登場、勝ち組み企業群の新戦略の展開
 Aとして日本が極度に競争力を持つ“人型ロボット”分野とか極めてコンピューター化し
未来型エンジンを搭載した自動車分野・超音速航空機分野とか、ナノテク工学分野、
バイオテクノロジーというよりは“生命工学”とでも呼べる分野とかの企業の登場、
アニメーションや音楽芸能エンターテーメントで新メディアの潮流に乗った
“アジアンPOP文化”の主力企業などの新しい企業群などが姿を現していることだろう。
Bとしては地方地域社会に活動を特化してNPOなどと連携したり地域通貨・環境資源を活動に
組み入れたりする企業やその広域ネットワーク、あるいは大都会を中心的活動エリアとする
極めて特殊高度なサービスを展開する“メトロ型企業”群とでも呼べるもの成長、等々。
いずれにしてもこの様な企業群のイメージは多彩で近未来的だ。その経営者像や
技術に違和感や理解困難を伴う場合もあるはずだし、否むしろそうあるべきなのかもしれない。
これの姿はネクストカンパニー達が結局“わが道を行く”行動をとった結果なのだ。
個性的企業などいうものはは所詮は理解しずらいものであるべきでさえあるのだ。
相互に理解困難性・了解不能性を孕む、個人、企業、非営利組織が混在する社会に於いては
新しい規範が必要だ。それが法律であれ理想であれ組織のガバナンスであれ新しい強制力を
伴ったものであるはずだ。最近の国内外での巨大企業の“自らが招いた不祥事”
の前に巨大企業と言えども無力・無能であったことはこれらの社会規範の厳然たる存在を
強く又深く証明してみせた。ネットワーク化された社会では、企業、個人、組織はある種の
“知識の連鎖”“規範の連鎖”の上にありこの圧力の存在からもはや逃れられない。
この様に企業を取り巻く環境は激変しつつある。